『オフィス移転マニュアル』
計画策定の進め方~設計・デザインから移転当日まで全行程を網羅。自社の大規模移転や100社以上のサポート経験をもとに具体的な実施内容や進め方のポイントを解説!ぜひご覧ください。
オフィスを移転するにあたって、気になることの1つに「費用」が挙げられます。詳細な見積もりを依頼する前に、おおよその費用の目安を知っておきたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
今回は、オフィス退去時・入居時・引き継ぎ時にかかるそれぞれの費用の目安を紹介します。オフィス移転のコストを抑えるコツにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
オフィス移転費用の内訳
はじめに、オフィス移転にかかる費用を大きく3つに分けて整理しておきましょう。どのタイミングでどのような費用がかかるのか、大枠を押さえておくことが大切です。
現在のオフィス退去時にかかる費用
現在入居しているオフィスを退去するまでの間にかかる主な費用は次の通りです。
・原状回復工事費用:入居時の状態に戻すための工事費用
・引っ越し費用:運び出す荷物の量・種類によって運搬費が変動する
・不用品の廃棄費用:産業廃棄物処理業の許可を得た業者やリユース業者に委託する
・退去日までの賃料:移転が解除日以降になる場合、賃料を請求される可能性がある
現オフィスの賃料はオフィスを移転する・しないに関わらず発生する費用のため、通常は移転費用には含めません。しかし、移転日が契約解除日よりも後になる場合は、退去に伴い発生する費用として計上しておく必要があります。一般的には退去日の6カ月前までに解除通知を行えば問題ないケースが多いものの、詳細については賃貸契約書を確認しておくことが大切です。
新オフィスへの入居時にかかる費用
移転先の新オフィスに入居する際には、次の費用がかかります。
・不動産取得費用(敷金/礼金・仲介手数料・保証料・前賃料など)
・内装工事費用
・設備工事費用(電気・電話・通信ネットワーク・空調・防災など)
・備品購入費用
・火災保険料
新オフィスの面積・立地のほか、契約条件や従業員数によって大きく変動しやすい費用です。敷金については、オフィスの規模が大きくなるほど高額になりやすいためとくに注意しましょう。オフィス移転に伴って新たに購入する必要のある備品も含めて、移転費用に計上しておく必要があります。
オフィスの引き継ぎにかかる費用
新旧のオフィスを引き継ぐにあたって発生する費用もあります。具体的には、次の費用がかかることを押さえておく必要があるでしょう。
・告知費用:取引先などに送る案内文や挨拶状を制作し、郵送する際に必要な費用
・届出書類作成費用:司法書士などに作成を依頼する場合の費用
・住所表記変更費用:Webサイトや名刺、封筒、帳票などの記載変更にかかる費用
オフィス移転の告知や住所表記の変更は必須となるため、あらかじめ移転費用として計上しておくのが得策です。上記のほか、オフィス引き継ぎの際には想定外の費用が発生するケースも少なくありません。万が一の事態に備えて、予備費を計上しておくと安心です。
オフィス移転費用の目安
ここからは、オフィス移転費用の目安を見ていきます。実際にかかる費用は退去・入居するオフィスの条件によって異なるものの、おおよその費用感は次のようにイメージしておくとよいでしょう。
現在のオフィス退去時にかかる費用の目安
・原状回復工事費用の目安
現在のオフィスの原状回復工事費用は1坪あたり6〜8万円程度、大型ビルの場合は1坪あたり10〜12万円程度と捉えてください。入居時に支払った敷金があれば、原状回復にかかった費用と相殺できます。空調設備の撤去や入れ替えが必要な場合、原状回復工事費用が高額になりやすいため注意が必要です。
・引っ越し費用の目安
引っ越し費用は、従業員1人あたり2〜5万円が目安です。ただし、オフィス移転件数が増える年度末や秋頃は引っ越し業者の繁忙期にあたるため、通常よりも引っ越し費用がかさむ可能性があります。運搬する荷物量や解体・組立作業の有無などによって費用が変動する点に注意してください。また、大型の什器を運搬する場合、クレーンを使った作業が必要となることも想定されます。実際の費用については、引っ越し業者に見積もりを依頼する必要があるでしょう。
・不用品の廃棄費用の目安
新オフィスに持っていかない不用品については、産業廃棄物処理業の許可を得た業者に依頼の上、運搬してもらう必要があります。2トントラック1台7〜8万円、4トントラック1台12〜15万円程度が費用の目安です。エアコンや電話機、FAX機などはリユース業者に買い取ってもらえる場合もあります。すべて廃棄するのではなく、必要に応じて売却も視野に入れておくことが大切です。
新オフィスへの入居時にかかる費用の目安
・敷金/礼金
将来的に退去する際の原状回復費用や、家賃滞納のリスクに備えて預けておくのが敷金です。50坪程度までの小規模オフィスでは賃料の3〜6カ月分、50坪以上の中〜大規模オフィスでは賃料の6〜12カ月分がおおよその目安と捉えてください。
礼金は物件によってかかるケースとかからないケースがあります。オーナーが個人であれば、賃料の1〜2カ月分を支払うケースが多いでしょう。
・仲介手数料
不動産会社に物件紹介を依頼した場合は、賃料の0.5〜1カ月分を仲介手数料として支払うケースが多く見られます。
・保証料
保証会社に加入する必要がある場合には、保証料(保証委託金)を支払う必要があります。一般的には賃料+共益費の0.5〜1カ月分相当が必要になるでしょう。
・前賃料
賃貸契約で前賃料の納入が定められている場合には、規定通りに支払う必要があります。契約内容にもよりますが、賃料の1〜2カ月分を支払うのが一般的です。
・内装工事費用
内装工事費用の目安として、1坪5〜20万円程度かかるのが一般的です。ただし、独自のレイアウトにしたい場合やデザイン性の高い内装にしたい場合などは、相場よりも内装工事費用がかさむ可能性がある点に注意してください。
・設備工事費用
空調や電気、防災などの設備工事費用は、1坪20〜35万円程度が一般的な目安です。デザインやレイアウトのプランニングを依頼する場合には、1坪あたり1〜3万円程度が加算されることも想定されます。
・備品/什器購入費用
現在のオフィスから持っていかない備品や、新たに必要となる什器については新調する必要があります。購入する備品・什器の種類や点数にもよりますが、おおよその目安として従業員1人あたり5〜30万円程度を想定しておくとよいでしょう。
・火災保険料
火災保険料は最長5年の保険期間を設定できます。一般的には、物件の契約期間と合わせて保険期間を2年間に設定するケースが多いでしょう。2年契約の場合、火災保険料はおよそ2万円です。
オフィスの引き継ぎにかかる費用の目安
・告知費用
取引先など関係各所へ送付する案内文・挨拶状については、従業員1人あたり1万円程度を計上しておく必要があるでしょう。部門によって必要な送付件数が大きく異なることも想定されるため、具体的な必要数を把握しておくことが大切です。
・届出書類作成費用
司法書士などに届出書類の作成を依頼する場合には、10〜25万円程度の費用がかかります。役所など複数の関係機関への届出が必要になる上に、提出期限が決められているものもあるため、作成を依頼することを織り込んで費用を計上しておくのが得策です。
・住所表記変更費用
Webサイトや名刺、会社案内、封筒・帳票類などの住所表記をすべて変更する必要があります。制作する点数や部数にもよりますが、おおよその目安として従業員1人あたり1〜2万円程度を想定しておくとよいでしょう。
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