目次
想いを実現するオフィスデザインの工夫
ユーザーの行動や隠れたニーズを知る
ーー ユーザーの皆さんのニーズをつかむために、普段どんなことをされていますか。
佐々木(珠):住宅の場合ですと、ご自身の行動を整理できていないお客さまが多いので、最初の面談で、お客さまの生活リズムや行動についてリサーチしています。
佐々木(高):個人のクライアントだとどういう人かというのを重視しますけど、星野さんのように、百人、千人単位のオフィスになると、個人の性格よりも、定量的に方向性を決めていく技術が必要なんでしょうね。
星野:そうですね。私たちはユーザーのニーズや行動を分析するために、「プログラミングデザイン」という考え方を用いています。ユーザーのタイプを大きく4種類に分け、それぞれの行動分析をすることで、一人ひとりに適したオフィスデザインを提案します。ユーザーの行動量とそのアウトプットの2軸でコミュニケーション量を数値化するのですが、それによって、「なぜ、そのオフィスデザインが良いのか」をロジカルに導くことができるので、皆さんが本当に求めているオフィスが提案できると思っています。
数値化する、しないの違いはありますが、アラキササキさんも同様のことをされているんですね。
「当事者」になってもらう
ーー オフィスデザインの難しいところはどんなところですか。
星野:もう、難しいことだらけですよ(笑)。オフィスレイアウトを変えることに、ポジティブな人とネガティブな人、両方いますから。なので、お客さまに納得いただくまで「生産性を高めるためにはこういう働き方が必要なのでは」と話をすることが大切です。佐々木さんも営業される中で同じことを感じていらっしゃるのではないでしょうか。
佐々木(高):そうですね。お客さまに大きな方針を納得していただいてからようやく図面を描く作業が始まるので、設計業務自体がコンサルティング業務を含んでるようなところがあるんですね。なので僕も、コンサルティングの大切さはよく分かります。
星野:我々は、オフィスレイアウトを変更するにあたって、3回ワークショップをするんです。1回目は、オフィスレイアウトの変更が必要になってきているという今の世の中の流れを説明し、2回目は、ユーザーのみなさんに、組み立てブロックで自由に理想のオフィスレイアウトを作ってもらうんです。もう、本当に自由なオフィスができます(笑)。3回目で、みなさんの理想はあるかも知れませんが、実際に測定した行動量をもとに考えると、こういうレイアウトでこんな風にゾーニングしたオフィスが理想的ですよ、といった話をします。
佐々木(高):ワークショップは効果的ですが……。大変ですよね(笑)
星野:大変です(笑)。いろんな意見が出ますから。でも段階を踏んで説明し、ユーザーのみなさんに当事者として考えてもらうことで、最初はオフィスレイアウトの変更にネガティブだった人の大半が、納得してくれるようになります。ゾーニングの効果や、コミュニケーション活性化のイメージが持てるようになるのでしょうね。
今求められるオフィスレイアウトとは
オフィスはもう、空間を共有するだけのスペースではない
ーー 今求められるオフィスレイアウトにはどのような傾向があるのかお聞かせください。
星野:用途に合わせてゾーニングしたりコミュニケーション活性化のための工夫をしながら生産性を高めることと、会社としてのアイデンティティを残すというオフィスの存在意義は変わらないと思います。ただ、働き方改革やコロナ禍を経て、空間を共有するだけのスペースではなくなり、オフィスレイアウトにも工夫が求められるようになっています。この先、Back to officeになるのか、このままハイブリッドオフィスになるのか、まだまだ分からないところがあります。「会議室を作りましょう」よりも、「オープンで可変性がある場所を作りましょう」と提案することが圧倒的に増えてきたように、お客さまからの要望も変化していますから。まさに、今日お邪魔しているアラキササキさんのオフィスのような、オープンに話せるオフィスレイアウトが重要になってくるでしょうね。
佐々木(高):そうですね。私たちの建築事務所のように、家ではできない仕事もあるので、オフィスは必要だと思います。ただ、これまでみんなが同じ時間でオフィスに集まっていたものが、部署ごと、人ごとに出社のタイミングが違ってくるはず。オフィスの中にもいろんな場所を用意しなきゃいけなくなると思うので、リサーチも難しくなりそうですね。
星野:本当におっしゃる通りで、働き方が柔軟になった今、一律のデータ結果だけでは誰も納得しないんですね。数字だけではなく、ユーザーのみなさんの想いや、私自身の想いも含めて、そこに関わる人の「感情」があってこそのデザインだと思っています。
ユーザーと一緒に考える、理想のオフィスレイアウト
ーー オフィスデザインを行う上で、ここだけは譲れない、というポイントがありましたらぜひ教えてください。
星野:譲るという概念がないかも知れませんね。
佐々木(高):お客さまと一緒に考えていくということですよね。
星野:おっしゃる通りです。ただ、オフィスレイアウトの変更にネガティブな人も含めて、ユーザーのみなさんが同じ方向を向けるようにしたいなと思います。そのために私がいるようなものなので。実際にオフィスを使うユーザーを巻き込み、さまざまな現場の声に耳を傾けることを意識しています。
佐々木(珠):そうですね。大きな視点はそういったところを大切にしつつ、素材はなるべく良いものを選びたいですね。予算がある中で、なるべく手触りの良いもの、使い心地が良いものを提案したいと思っています。
星野:在宅勤務やフリーアドレスが増え、お客さまの中に、無駄なスペースを省きたいという意識が高まり、今はスペースをかなり有効的に使わなければならなくなりました。一方で、オフィスはみんなで作っていくものだという感覚も芽生え始めています。オフィスを作ったら完成ではなく、いったん作っても変えていける可変性を持ったオフィスを、お客さまと一緒に作っていきたいですね。
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