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新オフィス移転のコンセプトは “D2Cブレンド”
“D2Cブレンド”に込めた思い
ーー具体的にプロジェクトをどう進めていったのかお聞かせ下さい。
金:私たちのグループにはD2C、D2C R、D2C ID、D2C X、カケザンという複数の会社があります。旧オフィスではグループごとに座席が固定されていたり、フロアも異なっていたので、グループごとに分かれている感覚が強く、グループ内での相乗効果を生み出しづらい環境でした。
そんな旧オフィス時代、あまり使われていなかったスペースをグループが交わるコミュニケーションスペースにしたいと会社に提案し、「D2 COFFEE」という社内カフェをオープンしました。そのカフェを起点に、これまで人通りの少なかったスペースが想像以上に社員の行き来が絶えないスペースとして生まれ変わりました。
そのようなこともあり、新オフィスでは2フロアの内の一つをダイナミックにカフェをシンボルとしたフロアにし、まるで広いカフェの一角で仕事をしているように社員がリラックスでき、偶発的な出会いが生まれるスペースを設計しました。
「D2 COFFEE」ではOPEN当初から一番人気のオリジナルブレンド「D2Cブレンド」というコーヒーを提供しています。まさにグループ各社がそれぞれの香りを引き立てつつも、良い形でブレンドされる空間になればよいなという想いから、コンセプトに「D2Cブレンド」が採用されました。
ーー旧オフィスと今のオフィスを比べると、当時は他部署の人との関わりは今よりも少なかったと感じますか?
波多:仕事上のやり取りはありますが、旧オフィスは会社ごとにフロアが分かれていたので、用事がない限りフロアを行き来することは少なかったですね。席も決まっていましたし、会社の色がそれぞれあったので、混ざりにくい感じがありました。偶然会って話をすることも少なかったです。
新オフィスに移ってからはフリーアドレスになり、会社ごとのフロア分けもなくなったので、仕事をしていると「久しぶり!」と声をかけられたり、カフェスペースで偶然会って「元気?最近どんな仕事をしているの?」といった会話が生まれることが格段に増えました。
一人一人の選択を叶えられるオフィスレイアウト
ーー実際のオフィスレイアウトなどはどのように決めていったのでしょうか。
金:プロジェクトを進めるうえでのコンセプトの一つが「選択肢」でした。出社するのかしないのか、今日はアイディア多めの仕事か、ミーティングをしに出社するのか、集中しに来るのか、他愛ない話をしながら仕事をしたいのかとか、700、800人が集うオフィスだからこそ、一人ひとりの用途が違います。それぞれの選択を叶えられる場所にしたい、と考え、オフィスレイアウトを決めていきました。
アクティビティベース型ワークプレイス(ABW)の考え方にも共感したので、DeepThinkだったりCo-Workといった、いろいろなシーンや業務を叶えられるオフィスレイアウトを意識しました。
鈴木:13階の中央部に管理部門となる中央ステーションを設けたのも、わかりやすさにつなげたいという仕掛けです。中央ステーションでは各種申請の対応や、備品の貸出をしたり、ヘルプデスクの窓口の役割も果たしています。
また、自然にコミュニケーション活性化がはかれるよう、背の高い椅子を配置して、個人の作業もできるけどコミュニケーションも取れるようなスペースを作ったり、モニターを見ながら集まって話ができるスペース、集中できる個室のブースを作ったりしました。
ーーDeepThink、Co-Work、Multi Task といったスペースがあるとのことでしたが、実際にどんな風に活用していますか。
大植:営業の私は考え込んで作業をするよりも、打ち合わせをしたり、チームメンバーと一緒に作業したりすることが多いので、DeepThinkよりも、Co-Work、Multi Taskのスペース、そして会議室にいることが多いです。チームメンバー5人は、情報共有のしやすさや、後輩メンバーから質問がすぐできる環境づくりも考えて、一緒にいることが多いです。
また、代理店営業という性格上、日々の広告運用などについて他部署のメンバーと話をすることが多いので、お互いMulti Taskのスペースにいて、「ここどうなってる?」と聞きに行ったり、「ここ、こうしたいんだけど」という話もすぐにできるようにしています。
リモートでお互いに話す機会が少なくなったことを上司も気にしているので、少なくともチームメンバーでは週2回出社して、終わったら少し飲みに行ったりしながら親睦を深めつつやっています。
ーーお客さんのところへ営業に行くことも増えましたか?
大植:まったくないわけではないですが、まだテレワークをしているクライアントも多いので、オンラインで会議をしたりと臨機応変にやっています。会社でオンライン会議をすると、「オフィスがすごく綺麗ですね」とおっしゃっていただいたりもします。
ーー今の実際の働き方は、満足度としてはどうですか。
大植:フリーアドレスなので、日によって、気分によって、場所を変えながら仕事できるところがすごくいいなと思っています。集中しやすいブース席、窓際のカウンター席、コミュニケーション活性化がねらえるハイテーブル席やジグザグデスク席など、いろいろなタイプのデスクがあるオフィスレイアウトも仕事のしやすさに繋がっています。
ミーティングの少ない日に出社する理由
ーー波多さんは、固定席だったオフィスからこちらに移ってどうですか?
波多:私もCo-Workスペースか、みんなとコミュニケーションが取りやすい場所を意識して選んで座っています。あとは、カフェを利用しにきた人の姿が見えやすい席に座っておいて、来た人を捕まえて会話をしたりもします。いつも捕まえにくいプロデューサーがいた!と思ったら「ちょっと打ち合わせいいですか」とすかさず声をかけたりしています。
また、私も入社5年目になり、新しく入ってきた方たちに質問を受けることが増えました。なので「波多さん、あそこにいたな」と思ってもらいやすい場所に座るように心がけています。オフィスに出社する時はコミュニケーションを取りたいと思っているので、なるべくミーティングの少ない日を選んでいます。
ーー会議用のブースもありますが、あえてミーティングの少ない日に出社されるんですね。
波多:最近は出社率が上がってきて、会議室が埋まっていたりもしますし、リモート会議で自分がスピーカーの時はどうしてもマイクが周りの音を拾ってしまったりするんですね。
また、リモート会議が増えてからは会議と会議の間の時間がなく、会議が終わったらまたすぐ別の会議というスケジュールも多いので、そういった日は家の自室で会議に参加することが多いですね。
ーー会社側からは、出社についてはどう決めていますか?
金:現在は週に1回、チーム単位で日程を定めるなど、なるべく直接顔を合わせる時間をつくることを推奨しています。あとは、新しいチームメンバーが入った時には、なるべく出社して対面で挨拶をしましょう、とか、みんなでご飯を食べにいきましょう、という声のかかり方が多いようです。
ーー新オフィスについての希望などがあったら教えて下さい。
波多:気分に合わせて場所や席のタイプを選べるのは気分転換にもなっていいですね。晴れの日は景色も良いので窓際で仕事をしたりしています。一方で、旧オフィスのそれぞれ決まった席があった便利さも知っているので、チームメンバーの中には、お気に入りの文房具や毛布、好きな物を置いて長時間の勤務でも快適に過ごせるようにカスタマイズした自分の席が欲しい、という人もいますね。私も、以前は自分の席に置いていたようなものを忘れて来てしまった時や毎回荷物を持って移動しなければいけないことに戸惑うこともありました。
ーー長時間勤務になりやすい部署では、働き方改革から進めることも必要なのかもしれないですね。
波多:はい。いいきっかけになると思っています。
ゾーニングを企画した意図と利用者の本音
ーー企画した二人はどのように新オフィスを活用していますか?
金:ミーティングデーは自宅を選択される波多さんの働き方は有効だなと思いました。というのも、個室が足りないという意見は移転当初もやはり出てきましたが、すべてのニーズに応えていたら個室はいくつあっても解決しません。特に、大き目の会議室はなるべくリアルな会議の場として使うというのが理想的な活用だと思いますし、そう使ってもらえるように伝え続けることも必要だと感じました。
今回、椅子を置かないスタンディングの会議ブースを多く作りましたが、それは長く会議をするのではなく、クイックに次に移行できるようにという意図がありました。腰を据えて話す場というより、「ちょっといい?」と声をかけて話せる場として作っています。会議室一つをとっても、「じっくり」と「サクッと」の使い分けができる選択肢も意識しました。
鈴木:私は管理職ということもあり、完全にフリーアドレスして私を見つけられない人が出てくるといけないので、常に13階の中央部にいるようにしています。ただ、フリーアドレスと言っているので、少しずつ席はずらすようにはしています。
ーー立場が上になったり、部下ができたりと、ポジションによっては居場所を明確にすることも必要になってくるということですね。
金:まさに、プロジェクトチームではゾーニングを気にかけていました。あまりに広いと、せっかくオフィスにきても行方不明になるし、「今どこにいる?」と言われてもわからなくなると思ったからです。そこで、各ゾーンを色分けしてゾーニングしました。会議室の色やデスクの色をゾーンの色に合わせてカラーリングしています。
鈴木:横長のフロアが左右対象になっているので混乱しやすいのですが、色分けでゾーニングしたことでわかりやすくなりましたね。
金:ロッカー問題もありました。波多さんのお話に合ったように、フリーアドレスになって自分の場所感が払拭されてしまいます。だからこそ、ロッカーを一人に一つ配布するのか、ニーズがある時に使えるようにするかを考えました。結局は後者にしましたが。