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コニカミノルタエムジーとタカラバイオが
クラミジア用ICAN試薬内蔵小型検査システムの共同開発契約を締結
2005年1月20日
コニカミノルタエムジー株式会社(社長:中村正)とタカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)は、平成17年1月19日付けで、コニカミノルタが開発したマイクロ総合分析システム(μTAS:マイクロタス、Micro Total Analysis System)とタカラバイオが開発した等温遺伝子増幅技術であるICAN法を組み合わせて、主要な性感染症のひとつであるクラミジアの小型検査システムを共同開発することに合意しました。
μTASは、近年、化学分析や生化学分析、微量合成など様々な分野で、小型化・高密度化・高効率化などの手段として大変注目されています。当社が開発したμTASシステムは、反応手順をマイクロメーターオーダーの微細な流路として集積加工した数センチ角の樹脂チップと、チップ内の試薬の移動制御や反応検出を行う制御検出器から構成されています。特に、試薬の移動制御には、コニカミノルタ独自の小型で高精度の多チャンネルピエゾポンプを用いており、シンプルな構造ながら、従来のシステムでは困難とされていた、同時に複数の流体を高精度に制御して精密混合や複数の反応を同時に行うことが可能となりました。
また、タカラバイオが開発したICAN法は、一定温度(約55℃)での遺伝子増幅が可能であるため、従来のPCR法による場合と異なり複雑な温度制御デバイスを必要とせず、また耐熱性のない素材でもチップを構築できるという点で、コスト面でも有利となることが期待されます。
クラミジアは、国内で100万人以上の感染者があると言われており、特に若年女性での感染拡大が社会問題となっています。クラミジアの検査には免疫反応を利用した酵素免疫測定法や特殊な設備内での遺伝子の増幅技術を利用した遺伝子検査法が一般に用いられており、検査センター等で使用されています。しかし、クラミジアなどの感染症の診療には、簡便性および迅速性に優れた検査法が必要とされており、前述の検査法はこれらの点で不十分と言われています。
両社で共同開発を行うクラミジア菌検出システムは、検体(尿や拭い液)前処理装置、シングルユースの樹脂チップおよび小型卓上分析装置からなります。核酸増幅試薬およびナノ粒子を用いた検出試薬を微細な流路内に搭載したシングルユースの樹脂チップを使用し、クラミジア菌を高感度かつ迅速に全自動で検出するシステムの開発を目指します。両社は共同開発に先立ち、モデル試験を実施し、微細流路でのICAN法によるクラミジア菌核酸の増幅と、増幅した核酸を高感度に検出できることをすでに確認しています。
また、本システムでは検査に用いる樹脂チップの使用を一度限りとすることにより、核酸増幅検査で常に問題とされる、増幅された核酸が誤って別の検査工程へ混入してしまうこと(コンタミネーション)を防止することができます。また、現行の検査システムに比べて小型化することにより、特殊な設備のない臨床の現場で、簡便で迅速な核酸増幅検査を可能にすることができます。
コニカミノルタエムジーでは、長期事業戦略「チェンジ2010」において画像診断装置事業の強化に加え、新規造影剤開発、診断薬、治療薬、検査機器などの拡充を図って行きます。クラミジア用ICAN試薬内蔵μTASシステムは、遺伝子検査の試薬と検査機器に関する最初の開発製品であり、今後検査項目を拡充して簡便性、迅速性および精度の高い遺伝子検査システムの構築を目指します。
今般の共同開発においては、開発期間1年以内をめどにしてICAN試薬内蔵μTASシステムを構築し、2008年度の製品化を目指します。更に他の感染症等の検査項目を拡充するために、製品の開発を両社共同で進めていきたいと考えています。
タカラバイオ株式会社の概要
本店所在地 | 滋賀県大津市瀬田3丁目4番1号 |
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設立 | 2002年(平成14年)4月1日 |
資本金 | 59億4,500万円 |
連結従業員数 | タカラバイオグループ751名(2004年4月1日現在) |
主な事業内容 | ・バイオ研究用試薬および理化学機器の開発・製造・販売 ・バイオ研究受託サービス ・遺伝子治療、細胞医療技術の開発および商業化 ・機能性食品素材・健康食品の開発・製造・販売 ・キノコの製造・販売 |
語句説明
マイクロ総合分析システム(Micro Total Analysis Systems; μTAS)
生化学や化学の実験室において使用される、分析機器や測定機器といった複数の機器のもつ機能を、微細加工技術を利用して小さな1枚のチップ上に集積化したシステムを指します。μTASを用いることにより、試薬量や解析に要する時間を低減することが可能となるので、医療現場などでの実用化に期待がかかっています。“Lab-on-a-chip”と称されることもあります。
コニカミノルタが開発したμTASシステムは、反応手順をマイクロメーターオーダーの微細な流路として集積加工した数センチ角の樹脂チップと、チップ内の試薬の移動制御や反応検出を行う制御検出器から構成されています。特に、試薬の移動制御には、コニカミノルタ独自の小型で高精度の多チャンネルピエゾポンプを用いており、シンプルな構造ながら、従来のシステムでは困難とされていた、同時に複数の流体を高精度に制御して精密混合や複数の反応を同時に行うことが可能となりました。
クラミジア
クラミジア・トラコマチス (Chlamydia trachomatis) というバクテリアが病原体で、現在日本で最も多い性感染症です。自覚症状に乏しいケースが多く、男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎等を起こし、女性の場合は感染を放置しておくと不妊症の原因ともなります。また、女性が妊娠中に感染している場合、出産時に産道で胎児に感染する産道感染を起こすこともあります。通常は抗生物質を1~2週間服用することによって治療することができます。
ICAN法
タカラバイオ株式会社が開発した高効率等温遺伝子増幅法です。キメラプライマー、鎖置換活性と鋳型交換活性を有するDNAポリメラーゼ、RNaseHを用いて等温で遺伝子を増幅できることが特徴です。
具体的には、キメラプライマーが鋳型と結合した後、DNAポリメラーゼにより相補鎖が合成されます。その後、RNaseHがキメラプライマー由来のRNA部分を切断し、切断部分から鎖置換反応と鋳型交換反応を伴った伸長反応が起こります。この反応が繰り返し起こることにより遺伝子が増幅されます。本方法を用いることにより、サンプル内に存在する目的DNAをPCR法と同等以上の感度で、しかも等温で増幅・検出することができ、従来PCR法で行われてきた感染症等の遺伝子診断をより高効率かつ低コストで行うことができます。
酵素免疫測定法
酵素で標識した抗体を抗原物質と反応させた後、その酵素による発色反応を起こさせることにより抗原物質の存在を検出する方法です。
PCR法
Polymerase Chain Reaction法(ポリメラーゼ連鎖反応法)の略称です。温度サイクル装置(サーマルサイクラー)を使用し、微量のDNAを数時間のうちに数百万倍にまで増幅する技術です。